それは、杉は日本にしかなく、住から食まで幅広く日本人の暮らしを支え、日本の文化を育んできた樹木である、ということにつきます。中世から長きに渡って杉の植林を行ってきた日本ですが、たったこの40〜50年、経済や利便性を優先して杉をないがしろにした結果、そのツケが溜まりに溜まって日本をゆがめてしまいました。戦後たくさん植林したにも関わらず安価で扱いやすい輸入材を選んだことで杉は売れなくなり林業は衰退、杉山は放置され環境は悪化、そして花粉症が蔓延・・・・。山は杉だらけです。多くの杉が伐採期を迎えている今、この杉をつかっていかなければなりません。むやみな伐採が問題となっている南洋材などの問題と、杉は違うのです。
そして、自然環境だけでなく、杉に育まれてきた日本人の豊かだった暮らしも失われつつあります。 ちょっと前まであった風景や町並み、風土に適した心地いい住まい、そこにあった人々の幸せな表情や信頼関係・・・。それらは杉と共にいつの間にか消え去ろうとしています。
そういった当たり前の日本の暮らしを取り戻し、日本の明るい未来を開いていく為には、杉が今おかれている状況をきちんと捉えて向き合い、杉と関わっていくことが必要なのではないでしょうか。今の杉は日本人が捨て去ってしまったものの代表であり、杉問題は日本社会のひずみの象徴ともいえるでしょう。だから杉なのです。